小説家志望の筆者が『シナリオを書きたい人の本』を読んだ感想
シナリオを書きたい人の本―ドラマ作りの楽しさを『実作指導』を通して伝える
- 作者:芦沢 俊郎
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: 単行本
芦沢俊郎が書いた『シナリオを書きたい人の本』を読みました。
私は小説家志望ですが、創作のイロハをまったく知りません。現在、ゆっくりと勉強中です。
そのため、そもそも「小説を書く」ことと、「シナリオを書く」ことの違いもまったくわからなかったのですが、この本を読んで自分なりにわかったことがあります。
ということで今日は、「シナリオ作りを学ぶことは、小説を書くうえで参考になるのか?」という視点で、『シナリオを書きたい人の本』を読んだ感想を書きます。
作家志望も身につけたい、シナリオを書く力
小説の書き方をネットで検索すると、必ずといっていいほど「プロット作りが大事」という旨の記事をみるはずです。
創作初心者の私としては、「プロットってどうやって作るの?」とちんぷんかんぷんで、いざプロットを書いてみようとノートを開いてペンを持っても、どうしていいかわからずうんうんと唸るわけです。
しかし、『シナリオを書きたい人の本』を読んで、「シナリオ作り」は「プロット作り」と同じなのではないかと思いました。
「シナリオ作り」とは、ドラマや映画などの「台本作り」である。といった方がイメージしやすいと思います。
台本は、登場人物のセリフと、ト書きと呼ばれる簡単な説明文のみで成り立っているものです。細かい描写を省いた、ストーリーの骨子のみが書かれています。
……これってプロットみたいなもんじゃないですか?
小説であれば、作家ひとりがプロットをもとに、物語の演出や人物描写、背景描写などを文章をつかって作りあげます。
しかしドラマや映画では、シナリオライターが作った台本をもとに、演出家や役者、美術スタッフなどの大勢が関わって作りあげていくことになります。
小説家とシナリオライターにはそうした役割の違いがあり、ストーリーの骨子という部分によりいっそう焦点が当たるのが、シナリオライターなのではないでしょうか。
ですので、シナリオ作りの力は、小説家になるためにも必要の力といえるでしょう。
シナリオの基礎
シナリオを小説に生かすとしたら、意識したいのが「映像化という視点」です。
小説という媒体は文字だけのものになりますので、描写の精度はどうしたって読み手の想像力に依存します。そのため、戦闘シーンなど派手で動きのある描写は苦手であると言われています。
しかし、自意識の塊である私みたいな小説家志望は、たいした作品も作れないのに「自分の作品が売れまくってアニメ化や映画化したらどうしよう」と妄想するわけです。
シナリオ作りの力を身につけて、「映像化という視点」をもって日頃から作品を作っていれば、そうした妄想も現実に少しは近づくのではないでしょうか。
『シナリオを書きたい人の本』では、
・ファーストシーンの重要性 ムダのない運びを心がけよう
・メインキャラクターの登場 インパクトのあるシーンを描こう
・インサートカット
・ムードシーンはビジュアルにこだわって
・場面を先読みされないようつねに配慮する
・登場人物の心の内側を描く
・ワンシーン・ワンテーマ
・説明セリフに要注意
・脇役の描き方を覚えよう
・大詰めはアップテンポで
・余韻を残してエンドマークを
(『シナリオを書きたい人の本』から一部引用)
などが解説されていて、とても参考になりました。
もし、『浦島太郎』でシナリオを作ったら
『シナリオを書きたい人の本』では実践として、著者である芹沢俊郎が『浦島太郎』や『桃太郎』といった昔話を、シナリオの考え方をもちいて再構成したものが例となって紹介されていました。
たとえば『浦島太郎』では、多くの人がファーストシーンに「浦島太朗の家」を想定するが、それではどうしても説明なシーンにしかならない、と著者は考えています。
浦島太郎と乙姫の物語という主軸を盛り上げるため、著者はファーストシーンを「浦島太郎と亀のドラマチックな出会い」に設定していました。
ムダのない運びを意識したわけです。
私のようなエンタメ小説を書きたいと思う人は、ムダのない運びを意識して構成を考えるべきですね。面白い。
番外編:占い師、中園ミホ
シナリオ作りに関することではないのですが、面白かったので余談として。
『シナリオを書きたい人の本』では、プロのシナリオライターである中園ミホのインタビューページがありました。
そこでは彼女の経歴が紹介されていたのですが、彼女はOLを一年半経験したあと四柱推命の占い師に転身し、その後29歳でデビューしたそうです。
子どものころからずっとシナリオの勉強をしていてデビューに至る、みたいな感じではないみたいですね。占い師を経験したことも、独特な感性を養う結果になったのでしょうか。
インタビューをとおして彼女の人生へのエネルギーみたいなものを感じて、少し羨ましいなあと思いました。
まとめ
ということで、シナリオについての小話でした。
小説家になるためには、いったいどんな努力をすればいいのでしょうか。資格の勉強などとは違い、努力が形が目にみえないものなので、不安になります。
ひとつのアプローチとして、シナリオについての知識を学ぶのもいいかもしれません。
はやく私も立派な小説をかけるような人物になりたいものです。