しかたなすびの読書記録

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【紀行文】オードリー若林正恭の『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』を読んだ感想

お笑い芸人であるオードリー若林正恭の『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』を読んだ。

2022年1月号の文學界に若林さんの対談が載っていて、そこで初めて若林さんが本を出していることを知った。

アマゾンで調べると、複数の本を出しているらしい。

その中でも気になったのが、キューバに行った紀行文であるというこの本だ。



ちょっと前には星野源の『よみがえる変態』というエッセイを読んでいて、それから芸能人の書く本に興味があったから、さっそく買って読んでみた。

めちゃくちゃ面白かった。

今日は『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』の感想を書く。




キューバは社会主義の国

キューバってどんな国?

アメリカの南の方にある国、としか知らなかった僕は、この本でキューバを少しだけ知ることができた。

というか、たぶんこの本を読んで知ったことが、僕のキューバのすべてだ。

そして、それは僕の知る社会主義というシステムの話のすべてということになる。



お笑い芸人の書いた文章だから、ユーモアたっぷりの本かと思ったら、そんなことはなかった。

この社会に生きづらさを抱え、他人と違ってうまくやれない自分に惨めさを感じている著者が、その自分が感じたことを通して、「日本という国の資本主義」と「キューバという社会主義の国」を、感覚として理解していく、そんな本だった。



僕が衝撃を受けた一文が、『キューバでは住む家は国からの割り当てだ。』というもの。

社会主義ってそうなの!?

家ほしいけど、ローン組むのはこわいなぁ、とか悩んでいる僕みたいな人は、キューバにはいないわけだ。

僕の知ってる世界と全然違うってことに、ものすごくびっくりした。



旅行をした気分になれた

若林さんの文章が端的でわかりやすく、そして自分の感じたことをそのまま書こうという意欲が見えて、なんだか一緒に旅行に行って、一緒にいろいろ経験したような気がするぐらい、楽しく読めた。



慣れない海外旅行の緊張もわかるし、知らない土地だからこそ普段の自分よりもアクティブになっていってテンションが上がるのもわかる。
(わかるって上から目線っぽく書いたけど、僕は海外は一度しか経験がない。)



そして思い出すのは、「観光名所で〇〇した!」というものよりも、「誰々と何々した!」という人との思い出だったりする。

そういうのすごくわかるー。



だだ、ビーチで巨漢のキューバ人と言い争ったあと、バスで股間からお金を出した話は、ちょっと盛ってると思う。(これは無責任なただの憶測で、ただの感想。それぐらい面白かった話だった。)



本の構成が素敵だった

最初の20ページぐらいは、正直なところあまり感情移入はできなかった。



資本主義批判、日本批判が目についた。

思想として、あまり共感はできないなと思って読んでいたけど、読み終わると、冒頭には必要なことが書かれていたんだなって思った。



若林さんの人生観を表しているということもそうなんだけど、今現在の自分のいる世界(日本)をぶっちぎって、別世界(キューバ)に行くための、一種の儀式なんだって考えると、すごく効果的な構成だったなと思う。



その効果にまんまとはまり、僕は若林さんと一緒に旅行に行ったと感じるぐらいに本にのめり込めた。



さいごに

この本は、キューバ、モンゴル、アイスランドと、3カ国を巡る紀行文だ。

そのそれぞれが、また違ったテイストで記されていて、どれもめちゃくちゃ面白かった。



陰キャを自称する若林さんが、自分の内面を見つめる旅を読み、僕自身も後ろ向きな考え方をする方だけれど、そんな自分でいいんだと肯定できるような、そんな前向きになれるような本だった。